獣医学部の浪人率・現役率はどれくらい?

獣医学部浪人率現役率

いきなりですが、獣医学部では浪人率が非常に高いです。

新規入学者の浪人率、現役率(現役合格率)は、ざっくりと6割くらいが浪人を経て合格した学生で、残りの4割が高校卒業直後の現役合格した学生になります。

もちろん大学や年度によって異なるので、半数以上が現役合格という場合もありますし、8割以上が浪人生というケースもあります。

とはいえおおよそ平均すると、半数以上が1年以上の浪人を経た学生で、なかには3年超のいわゆる多浪生もたくさんいます。

ぶっちゃけ、この半数以上が浪人するという数値は、かなり高いです。

これは、獣医学部・獣医学科が非常に難関で、競争倍率が高いことに起因します。

同じくらいの浪人率、現役率となるのは医学部くらいなもので、一般的に難関と考えられている歯学部や薬学部だってここまでの数値にはなりません。

こういった情報があると、将来獣医師になりたい、獣医学部・獣医学科を目指している中学生、高校生やそのご両親は心配になってしまうかと思います。

また、浪人してまで獣医師になりたい、獣医学部・獣医学科に進学するのは辛い、どうしよう、と迷ってしまうこともあるでしょう。

今回は、そういった不安や悩みを抱えている方々のために、「獣医学部の浪人率・現役率」について整理、解説していきます。

また、獣医学部・獣医学科の受験の滑り止めや、多浪を回避するための考え方についてまとめていきたいと思います。





獣医学部は現役率低い、浪人率高い


冒頭でも書いたように、獣医学部・獣医学科の現役合格率は非常に低く、指定公推薦や現役受験生向けの特別枠を設けている大学の獣医学部であっても、せいぜい5~6割程度がいいところでしょう。

浪人生が学生の大半を占める学年、大学なんてざらですし、むしろそれが標準的な獣医学部・獣医学科の風景だったりもします。

大学の一般入試で、現役合格できる学生はよほど優秀な学生ということになります。

なんならそういった学生は、獣医学部ではなく、医学部だって狙えたりするくらい優秀でしょうね。

二浪や三浪の浪人は当たり前という獣医学部


浪人を経て獣医学部に入る学生も、1年間の浪人(一浪)で合格できれば上出来です。

獣医学部では二浪や三浪、あるいはそれ以上の期間を浪人生としてすごした、いわゆる「多浪生」は珍しくありません。

別記事でも書いていますが、獣医学部・獣医学科の場合、特段に「入りやすい獣医学部」や「簡単な獣医学部」というものが無く、国公立であっても私立大学であっても獣医学部・獣医学科はそんな感じです。

獣医学部で入りやすい、偏差値低い大学はどこ?→どこも難しい【悲報】

私の知り合いで獣医学部に進学した人も、5年間の浪人の末にやっと合格していました。

獣医師という仕事に興味のない人からしたら「どうしてそこまでするの?」と思ってしまうかもしれませんが、それが獣医学部の世界であり、それくらいの困難を覚悟して受験に挑んでいるということになります。

獣医学部は現役率低い、浪人率高い理由


一体どうして獣医学部はこれほどに現役率が低い=浪人率が高いのでしょうか。

その理由は、獣医学部特有の事情がありまして、ざっくり挙げると下記のようなものがあります。

・獣医学部、獣医学科の定員が極端に少ない

・「心の底から」獣医師になりたい人が多い

・獣医学部を諦めた学生の受け皿が無い

・浪人が当たり前になると現役合格が難しくなる悪循環

簡単に解説しておきます。

獣医学部、獣医学科の定員が極端に少ない


獣医学部、獣医学科の現役率が低い、浪人率が高いことの最大の理由は、そもそも獣医学部・獣医学科の総定員数が極端に少ないということです。

これは、浪人率や現役率だけではなく、単純に受験難易度・偏差値の高さにも直結しますね。

記事執筆時点において、日本における獣医師養成課程の大学定員は1学年あたり約1000人ほどです。

年間、1000人にしか、獣医師になる将来の道が開かれないということですね。

特に、国公立大に限定すると400人弱でして、この数値は今後も大きく変化することはなさそうです。
 

ちなみに、医療系として医学部、歯学部、薬学部の総定員数を挙げておくと、薬学部で約1万2千人、歯学部が2600人、医学部でも850人となっており、まさに「狭き門」であることがわかるかと思います。

「心の底から」獣医師になりたい人が多い


上述のような、狭き門、たった1000人の枠しかない獣医学部、獣医師の道に対して、「心の底から」獣医師になりたい人が多数いる、というのも、浪人率を高める要因となります。

獣医師という職業は非常に特殊で、「動物が大好きでたまらない」という強い気持ちで獣医学部受験に臨んでいる学生が大半なのです。

こういった学生は、1年や2年浪人したところでなかなか夢をあきらめません。

これは、「単に成績がそこそこ良かったから」という理由で学部を選択する学生が比較的多い、医歯薬学系とは事情がことなります。

別の言い方をすると、獣医学部の場合は「単に成績がそこそこ良かったから」という理由で進学してくる学生はほぼ皆無ということになります(そういった学生は、不思議と医歯薬学部に進学し、獣医学部には来ない)。


獣医学部を諦めた学生の受け皿が無い


希望していた大学の学部になかなか合格できず、浪人が嫌あるいは浪人年数が限界・・・という場合、「諦める」というのはよくあることです。

例えば、医学部を希望して3年間の浪人をした末に諦めて、薬学部や歯学部(あるいは看護学部)で妥協する、といった具合ですね。

この場合、薬学部や歯学部(あるいは看護学部)は医学部の「受け皿」として機能します。

ある意味、医学部における浪人率や、多浪生の割合を一定の水準に留める緩衝材的な役割ということになります。

しかし、獣医学部の場合、この緩衝材的な役割をする適切な受け皿学部が無いのです。

もちろん学力的には、薬学部や歯学部が、獣医学部志望者の受け皿となります。

しかし、卒業後の進路である「獣医師」と「薬剤師」「歯科医師」といった仕事は、獣医師志望者からすれば全く異なるものなのです。

というのも、獣医師を目指している人の場合、やはり「動物」を相手にした仕事、「動物」の健康や医療に関わりたいと考えているから。

ヒトの医療を担当する気はさらさらないのです。

じゃあ、動物の看護職はどう?と思うかもしれませんが、動物の看護職というのは、人間の看護師と異なり国家資格が無くても、動物病院で働けたりします。

通信教育で取れる民間資格や、獣医学部よりもはるかに受験難易度の低い大学、専門学校で事足りてしまうレベルです。

獣医学部受験を断念して、動物看護系の大学に進学・・・だと落差が大きすぎて、もったいない、という話になるのです。

浪人が当たり前になると現役合格が難しくなる悪循環:獣医学部は現役生には過酷


上記のような背景で、獣医学部の受験者は浪人経験者の割合が非常に高くなってきます。

こうなってくると、 「浪人が当たり前になり、現役合格が難しくなる」という悪循環に入っていくのです。

というのも、浪人生と現役生は、その、勉強に費やせる時間の差が圧倒的に違います。

浪人生の方が、受験勉強だけに集中できるし、高校3年間プラス浪人期間の分だけ受験対策ができているので、一般入試において現役生は確実に不利になりますよね。

浪人生を押しのけて、現役で合格する学生は相当学力が高いということになります。

結果的に、浪人生に敗れた現役生は、浪人し、翌年の現役生の前に立ちはだかる・・・というスパイラルです。

ぶっちゃけ、獣医学部受験の世界は現役生には過酷すぎるんですよね。

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獣医学部・獣医学科の滑り止めはどうする?


獣医学部はどうしても、現役合格が難しく、結果的に浪人率が高くなります。

とはいえ、獣医師養成課程の獣医学部は6年制でして、卒業時の年齢を考慮すると、そんなに何年も浪人できない、というのもあります。

また、大学受験全般に言えることとして、経済的な側面や家族の理解といった点からも、何年も無制限に浪人できるわけではありません。

そのため、「獣医学部・獣医学科の滑り止め」についてどう考えるか?がとても重要です。

「獣医学部・獣医学科の滑り止め」の考え方ですが、下記の3つに絞られるかと思います。

・比較的入りやすい私立大学の獣医学部・獣医学科

・地方国立大学、私立大学の薬学部・歯学部

・動物看護系の学部、専門学校

ただし、すでに書いたように、「動物看護系の学部、専門学校」については、現実としてはおすすめできません。

解説していきます。

比較的入りやすい私立大学の獣医学部・獣医学科


獣医学部・獣医学科受験にて、多浪を回避する、あるいは現役で合格するための滑り止め戦略として、最も有効、現実的なものは「比較的入りやすい私立大学の獣医学部・獣医学科」を狙う、というものです。

別記事で書いたように、獣医学部は国公立、私立問わずどこも難関で、入りやすい獣医学部はありません。

獣医学部の難易度、偏差値を考察:簡単?難しい?【国立・公立・私立】

とくに国公立は、授業料の安さもあって激戦です。

とはいえ、多少、偏差値の低い獣医学部や、地方で人気の無い獣医学部、受験科目をよく見ると自分にとって有利な獣医学部があるはずです。

そういった、 比較的入りやすい(おそらく私立)大学の獣医学部・獣医学科を滑り止めにすることで、現役合格、浪人・多浪回避を試みましょう。

地方国立大学、私立大学の薬学部・歯学部


獣医学部・獣医学科を断念、あるいは、もしもの時の滑り止め地方国立大学、私立大学の薬学部・歯学部という進路はかなり現実的です。

獣医学部と異なり、薬学部や歯学部は、偏差値の低い大学から高い大学まで幅広いため、獣医学を狙っているレベルの学生であれば、自身の学力に適した、合格確実な大学を選ぶことはできるはず。

世間体的にも、薬学部や歯学部ならそれほど問題ありません。

この場合、将来の獣医師の職業を諦める事にはなります。

とはいえ、生命科学、医療系のお仕事という広い視点では、希望にそこそこ合致した人生を歩むことが可能です。

また、例えば薬学部に進学した後、動物用の医薬品企業に就職するといった将来も可能性としてはあるでしょう。

獣医師という、一点に絞らずに視野を広げることで、受験の難易度を下げることができます。


動物看護系の学部、専門学校


獣医学部、獣医師の夢を諦めた場合、あたまに思い浮かぶのは「動物看護士」という仕事ではないでしょうか。

獣医師も動物看護士も、同じ動物の医療に関わる仕事ですし、現場では協働で働くのでイメージしやすいですよね。

実際こういった考えで、獣医学部の滑り止めとして、動物看護系の大学の学部や専門学校を考える人がいます。

まー、これはこれで本人が良いのであればいいのですが、ぶっちゃけ、個人的にはおすすめしません。

というのも、動物看護士という仕事は、社会的地位や収入が、全くと言っていいほど高くありません。

アルバイトやパートのお小遣い稼ぎでやるなら良いのですが、一生の仕事にするには厳しいものがあるでしょう。

獣医師と動物看護士の関係は、医師と(ヒトの)看護師とは全く異なるんです。

動物看護系の大学の学部は偏差値30くらいで入学できたりしますし、卒業後の就職率もそれほどよくありません。

獣医学部を目指していたくらい学力のある人、受験勉強に時間を費やした人の進路としては「もったいない」というのが正直なところですよ。

ただし、動物看護士については、「愛玩動物看護師」という国家資格化が2022年に予定されており、今後状況は変わってくる可能性はあります。

獣医学部受験で、浪人・多浪を回避する3つの戦略


滑り止めとは違う視点ですが、獣医学部受験で浪人を回避する戦略として3つほど、以下に挙げておきます。

万人に当てはまるわけではありませんが、考えてみる余地はあるかと。

現役学生限定の推薦入試


獣医学部は現役率が低い、浪人生の方が結局有利、と書きましたが、一部の大学では、受験対象を現役学生に絞った推薦入試を実施しています。

こういった制度を利用すれば、ライバルは同じ現役学生ばかりになるため、人によっては比較的合格しやすく、現役で獣医学部に進学できる可能性が出てきます。

もし、希望する大学の獣医学部・獣医学科でこういった推薦入試制度があり、活用できるのであれば挑戦してみましょう。

できるだけたくさんの大学の獣医学部を受験


多くの獣医学部志望の学生が行っている戦略ですが、とにかく複数の、たくさんの大学の獣医学部を受験する、というのも有効です。

日本の大学の獣医師養成課程は、国公立大学が11校、私立大学が6校となっています。

国公立大学の入試は同じ日程で一斉に実施されますので併願できませんが、私立大学の場合は日程をずらして行われます。

そのため、国公立大学1校に加えて私立大学6校、計7校の獣医学部・獣医学科でチャンスがあるわけです。

獣医学部の場合、偏差値だけではなく、競争倍率も高いため、「学力的には十分なのに、些細なミスや、たまたま苦手な問題が出題されたため不合格」といったケースもあります。

そのため、複数大学を受験して、単純にチャンスを増やすことは合格の可能性を高めることができるのです。

どこでもいいから、獣医学部に合格したい!という人向け。

受験する大学を絞る


反対に、受験する大学をあえて1校ないし2校程度に絞る、というのも獣医学部の受験戦略としては「アリ」です。

獣医学部の難易度は、いずれの大学もほぼ横並びな偏差値となっている一方で、大学ごとに問題の出題傾向が異なり、全ての大学の出題傾向に対策を講じるのは大変です。

そのため、横並びの受験者から頭一つ抜き出るために、第一志望の大学の獣医学部に的を絞って徹底的に対策を行うことで勝機がみえてくるかもしれません。


獣医学部を受験するのに仮面浪人はありなのか?


大学受験での現役、浪人を議論するにあたり、忘れてはいけないのは「仮面浪人」とう選択肢です。

獣医学部を目指しての「仮面浪人」について、触れておきます。

仮面浪人とは、何らかの事情により、他学部・他大学の大学生として学生生活を送るものの、実は本命の大学・学部を目指して浪人しているとうものです。

通っている大学の講義や課題をこなしつつ、毎年春の一般入試のための受験勉強をコツコツやるというハードな生活になります。

一般的には「仮面浪人」のメリットとして、以下のようなものがあります。

・最終的に希望の大学、学部に合格できなくてもセーフティネットがある

・いつまでも浪人して、世間体が悪くなったり、家族に疎まれるのを回避できる

・何年にも及ぶ浪人生活による「人生の停滞感」から解放される

仮面浪人は他学部に所属して、大学生と浪人生の二足のわらじを履くわけですが、結論としては、獣医学部をめざすのであれば、「仮面浪人」はおすすめしません。

理由は、単純に、「仮面浪人しながら目指して合格できるほど獣医学部は甘くない」からです。

普通に受験勉強して合格できないのに、一日の大半を、大学生として過ごしていては、他の浪人生や、現役の高校生に勝てるはずがありません。

特に、獣医学部は難易度・偏差値だけではなく、競争倍率も高いので、「運よく合格」なんてパターンも極端にすくないのが特徴ですから、

浪人するのであれば、素直に普通に浪人生活をして、一日の時間を受験勉強にフルコミットする方が合格率は高くなります。

獣医学部の浪人率・現役率はどれくらい?【まとめ】

 
以上、獣医学部の浪人率、現役率について、現状とその背景、対策について簡単に整理してきました。

結論としては、獣医学部の浪人率は非常に高く、現役率はせいぜい4割ほど、浪人率が6割ほどになっています。

浪人の年数も、1年や2年ではなく、3年以上浪人している学生(いわゆる多浪生)もごろごろしています。

これは獣医学部・獣医学科の難易度が高いことに加えて、倍率が高く、かつ、獣医学部を目指す学生が、獣医師という仕事に対して強い熱意を持っていることが理由です。

浪人生が多いことにより、どうしても現役生は受験で不利になり、さらに浪人するという悪循環が生まれている傾向がありますので、現役合格するのはかなりの学力が必要、至難の業でしょう。

もちろん無制限に何年でも浪人することができれば別ですが、たいていの人はそうもいきません。

とはいえ、数年の浪人を躊躇して、獣医師という夢をあきらめるのはナンセンスです。 

前述した、滑り止め対策や、多浪を回避する施策等、なんらかの工夫をうまく取り入れて、獣医師を目指していくことが必要かもしれません。

それじゃあ今回はこれ位にしておきます

では。



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