獣医師になるには、大学で「獣医師養成課程」のある獣医学部や畜産学部あるいは農学部等で6年間の課程を修了し、その後、獣医師国家試験に合格する必要があります。
んで、この大学の「獣医師養成課程」で学ぶにあたって、気になるのは「6年間の学費」なんですよね。
結論をはじめに書いておくと、「獣医師養成課程」である獣医学部や獣医学科の6年間の学費(入学金含む)は、高額です。
ざっくり計算すると、国公立大学で400万円弱、私立大学では大学ごとに幅があるものの1000万円~1500万円ほど必要です。
また、学費とは異なりますが、自宅から通学できる範囲に獣医学部・獣医学科のある大学が無い場合は、一人暮らしをしながら通学することになりますので、当然その費用も6年分必要です(年間100万円超必要)。
家庭の収入や居住地域にもよりますが、この額(特に私立大学獣医学部の学費)は高い、あるいはとても払えないと感じる人もいるでしょう。
「あまり家庭が裕福でない人は、どうやって学費を払えばいいのか」
「学費を払えない、払えそうにない場合はどうすればいいのか?」
「私立大学獣医学部に通うには親の年収いくら必要なのか?」
今回は、こういった点に触れつつ、獣医学部の高額な学費について整理、解説してきます。
獣医学部の学費が高い!払えない(かもしれない)
冒頭でも書いたように、私立大学の獣医学部は一般人の感覚からすれば非常に高額です。
まーこれは私立大学区の理工系学部や、医療系の学部全般に言えることですが、研究のための資材や機器、実習、施設維持費などで学生一人当たりの教育に必要なコストが高額になります。
それが学費に反映されているというもの。
特に、獣医学部の場合は「6年間」の学費となりますので、4年制学部の1.5倍以上の学費が必要になるわけです。
国公立大学の場合は、税金が投入されているため、どの学部の一律で年間授業料は55万円ほどですが、4年制学部の1.5倍必要になります。
私立大学獣医学部の学費は6年で1,000万円超、国公立大学で400万円
入学金と6年分の学費とざっくり計算すると、
・国公立大学の獣医学部・獣医学科で400万円弱
・私立大学の獣医学部で1000万円~1500万円
といった資金が必要になります。
日本の世帯平均年収は550万円ほど(2018年)と言われていますから、私立大学の1000万円を超える費用を捻出できるのは、医師や、大手企業の会社員のご家庭などかなり限定されてきます。
ごくごく普通の家庭にとっては国公立大学の400万円弱の学費でも高額に感じるでしょう。
合格したのに獣医学部の学費が払えない!なんてことはシャレになりません
もし、普通の家庭で育って、獣医師、獣医学部を目指しているなら、このあたりの、「学費をどうやって払うか(払えるか、払えないか)」について、シビアに考えておかないといけません。
厳しい受験勉強を勝ち抜いて大学に合格したのに、授業料を払えない、あるいは在学中に授業料が払えなくなる、なんてことになるとシャレになりません。
学費以外にも必要な生活費
ついでに追い打ちというか、追加しておくと、大学で学ぶために必要なお金は学費だけではありません。
獣医師養成課程を設置している大学は、日本に17大学しかありません。
そのため、どうしても自宅から通学できず、県外で一人暮らしをしながら通学する、というケースが出てきます。
この場合、6年間の生活費が必要になります。
地域によりますが、ざっくり計算して年間100~200万円ほどのお金が必要です。
獣医学部の学費はなんとかなる?どうやって払う?
こういった、「高額な」獣医学部の学費をどうやって払うか、これが重要なポイントですね。
お金持ちの家庭で全部親が払ってくれる、というなら問題ありませんが、すべての学生がそういった恵まれた境遇にあるわけではありませんから。
獣医学部の学費の資金を集める方法は下記のようなものになります。
・親に払ってもらう
・アルバイトで補う
・奨学金を借りる
・授業料(学費)免除の制度を利用する
一つ一つ見ていきましょう。
親に払ってもらう
通常、大学に通うには親や親族からの金銭的なサポートがある程度必要になります。
働きながら、苦労して大学に通う・・・という苦学生も世の中にはいますが、相当な体力と忍耐力がないと難しいです。
ましてや学費が高額、かつ、6年間の就学が必要な獣医学部ですからね。
アルバイトで補う
学費や生活費の一部であれば、アルバイトで稼いだお金で補うことはできるでしょう。
ただし、獣医学部の場合、勉強が忙しく、高学年になると実習や卒業研究に追われてしまうので、思ったほどアルバイトをする時間はありません。
文系学部の学生のように、毎日遅くまでアルバイトして、大学には週2~3回、午後から行けばよい・・・なんて生活だと、勉強についていけず確実に留年してしまいます。
月に数万円程度のアルバイト収入を得るくらいが限度ではないでしょうか。
奨学金を借りる
大学生は各種の奨学金を借り入れることができます。
近年は奨学金の返済に窮する若者が増えたせいで、賛否両論ありますが、低利子あるいは無利子かつ無担保でお金を貸してもらえる制度は素晴らしいです。
各機関によって貸与上限額や、貸与条件は異なりますが、たとえば日本学生支援機構の第二種奨学金の場合、私立大学獣医学部なら月額最大14万円借りることができますので、年間168万円分の学費(と生活費)を工面できることになります。
さらに、獣医学部の場合、産業動物獣医師の確保のために、各自治体が設けている奨学金制度もあります。
この制度では、卒業後に、規定の年数、指定の就業先で働くことで、変換免除・減額が受けられたりと充実しています。
授業料(学費)免除の制度を利用する
たいていの大学では、授業料を免除あるいは減額してくれる制度があります。
基本的には世帯年収が一定額未満で成績優秀な学生が対象となります、
私立大学の場合は、学年でトップクラスの学生を対象に、学費全額免除といった制度だったりしますので、これだけで数百万円分工面できることになりますよね(かなりの努力は必要ですが)。
国公立大学の場合はこれほど条件は難しくなく、世帯年収低くて、留年等をしていない学生であれば比較的簡単に免除や減免を受けられたりするのです。
私立大学獣医学部の高い学費を払うには、親の年収はいくら必要?
さて、では上記のことを踏まえて、「私立大学獣医学部の高い学費を払うには、親の年収はいくら必要か」といったことを考えていきたいと思います。
私立大学獣医学部の6年間の学費1000万円に、一人暮らしで年間150万円=6年間で900万円、合わせて1900万円を工面していくとしましょう。
こちらの記事で紹介していますが、額面年収に対し教育費に25%を投資できる、と仮定して、年収ごとに考えてみます。
世帯年収400万円で私立大学獣医学部の高い学費を払えるか
世帯年収400万円として、年間100万円、6年間で600万円を確保できます。
1900万円-600万円=1300万円が不足しますね。
残りを奨学金やアルバイトで補えるか?ですが。
日本学生支援機構の奨学金を6年間で1000万円、アルバイトで6年間で200万円(年30~40万円)ほど工面しつつ、授業料の免除・減免あるいは、そのほかの奨学金を追加で借りたり、家庭の貯蓄で賄えば、「ぎりぎり何とかなる」という結論になります。
ただし、留年したり、急な出費があるとかなり厳しい状況になりますし、卒業時に1000万円以上の奨学金をかかえているので気持ち的にはかなり不安です。
世帯年収200万円で私立大学獣医学部の高い学費を払えるか
母子家庭や、いわゆる貧困世帯として、世帯年収200万円のケースはどうでしょう。
年間50万円、6年間で300万円を確保できます。
1900万円-300万円=1600万円が不足しますね。
先ほどの400万円のケース同様、日本学生支援機構の奨学金を6年間で1000万円、アルバイトで6年間で200万円(年30~40万円)ほど工面しましょう。
残りは1600-(1000+200)=400万円となります。
この世帯年収の場合、家庭の貯蓄は期待できませんので、授業料免除や、自治体の奨学金に採用されることが必須となってしまいます。
不可能ではないものの、運が悪ければ(幸運でなければ)、在学中に資金がショートして学費を払えなくなってしまうレベルですね。
残念ですが、これくらいの世帯年収の場合、私立大学の獣医学部に進学するのはお勧めできません。
受検難易度は上がるものの、国公立大学に絞って検討するべきかもしれませんね。
世帯年収1200万円で私立大学獣医学部の高い学費を払えるか
医師(勤務医)や大手企業のエリートサラリーマンの家庭ではどうでしょう。
世帯年収を1200万円と想定した場合、年間、25%の300万円、6年間で1800万円を学費を含めた在学費用に充てることができます。
6年間で18000万円なので、1900万円-1800万円=100万円が不足しています。
このレベルの年収の世帯であれば、貯蓄があると思いますし、多少アルバイトをすれば、奨学金を借りずとも何とかなるレベルですね。
同じように理系の私立大学に通っている兄弟がいる・・・といった事情があれば別ですが、お金のことは心配せずに学業に専念できるのは、世帯年収を1200万円以上ということになります。
もちろん、このレベルの年収で、国公立大学の獣医学部に進学すれば、とても親孝行、まったく心配ありません。
ところで、獣医学部の高い学費のもとは取れるのか?
獣医学部の「学費」の話になったので、ここで、「獣医学部の高い学費の元はとれるのか?」といったことにも触れておきます。
例えば、上述の「私立大学獣医学部に一人暮らしで6年間通学したケース」で1900万円の費用が必要です。
んで、就職したあと、これに見合う年収はもらえるの?って話なんですが。
まず、一つ残念なお知らせとして、いわゆる町の獣医師さん(小動物臨床獣医師)になった場合、開業せずに、勤務医として働くと年収は300万円~500万円、開業医でも零細であれば500~600万円ほどです。
もちろん地域や、病院の人気度合いによりますが、ぶっちゃけ、3年間の教育でなれる看護師と同等あるいは少し安いくらいの年収になっています。
これでは、私立大学獣医学部の高い学費に見合いませんよね、元が取れないといってもいいレベルです。
実をいうと、町の獣医師さん(小動物臨床獣医師)は何年も前から飽和状態にあり、動物病院も顧客の取り合いであまり報酬面で魅力がなくなってきているのです。
一方で、畜産動物の獣医や公務員獣医師、製薬企業などの民間企業の獣医師は年収600万円~1000万円となっており、比較的高収入になります。
人間の医師に比べれば薄給ですが、まー、これくらいの年収であれば、私立大学獣医学部の高い学費に「ぎりぎり」見合うのかもしれません。
とはいえ、全般的に、獣医師の年収に対して、私立大学獣医学部の学費は高額です(しかも、受検難易度はかなり高い)。
個人的には、圧倒的に学費が安い、国公立大学の獣医学部・獣医学科がおすすめですね。
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獣医学部の学費が高い・払えない!6年間で○○万円:どうやって払う?親の年収いくら必要?【まとめ】
以上、獣医学部の学費について今回は整理して解説させていただきました。
基本的に、6年制の学部であること、医療系の学部であることから、大学の就学にかかるコストは比較的高額です。
とくに、獣医師養成課程のある大学が極端に少ないため、自宅から通学できる学生は限られています。
学費だけでも、私立大学で1000万円~1500万円、国公立大学で400万円ほど必要になります。
あまり家庭が裕福でない場合、獣医師を目指すなら、国公立大学に限定せざるを得ないかもしれません。
また、獣医師となったあとの年収を考慮しても、高額な学費をかけても「割に合わない」「元がとれない」といった意見もあるかと思います。
このあたり、バランスを考えて慎重に大学を選択していきましょう。
それじゃあ今回はこれくらいにしておきます
では。
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