国公立大学と私立大学合わせると、2019年現在70以上の大学が薬学部を設置しています。
さらに新たに薬学部の設置を予定している大学もあり、2025年頃には約80の大学が薬学部をもつ見込みです。
日本各地に薬学部があるわけですが、実はいくつかの大学の薬学部では「定員割れ」がおきています。
薬学部=人気、難しいというイメージとは真逆の減少ですね。
この薬学部定員割れ現象ですが、いい事なのか、悪いことなのか、いろんな見方をすることができます。
本記事では薬学部定員割れ現象について、メリット、デメリットに着目して整理していきます。
薬学部定員割れ現象はどこで起きている?
現在20弱国公立大学と60程度の私立大学が薬学部を設置していますが、定員割れが起きているのは主に地方の私立大学です。
実は日本の薬学部は2000年頃が現在ほど多くありませんでした。
2000年代のはじめから2010年くらいにかけて「薬学部新設ラッシュ」という現象がおき、一気に30校ほど急増したのです。
規制緩和と将来の高齢化社会に備えたい政府と、少子化に伴う学生不足を解消するために大学の競争力を高めたい大学側の思惑が一致した形ですね。
しかし、いま現在、主にこの時期に新設された薬学部にて「薬学部定員割れ現象」が起きています。
主に地方部の私立大学で目立って来ていますね。
例をあげると、長崎国際大学薬学部、九州保険福祉大学薬学部、奥羽大学薬学部や松山大学薬学部といった大学です。
入学試験の非常に低い倍率や定員割れが起きている可能性があります。
薬学部定員割れ現象はなぜ起きている?
私立大学の場合、薬学部をはじめとした医療系学部では、とても学費が高く、どの学部でも同じ授業料を納付する国公立大学との格差が大きいです。
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そのため、都心部で利便性の高い立地にある私立大学や歴史と伝統のある名門大学でもない限り、国公立大学と比べて、受験生にとって魅力がありません。
地方の私立大学の薬学部に行くくらいなら、地方の国公立大学の薬学部のほうが断然良いというわけです。
また、単純に2000年代はじめの薬学部新設ラッシュで定員を増やしすぎたことも原因でしょう。
薬剤師は安定した人気の職業ですが、薬剤師を志す若者の数は意外と少ない、いわばマイナーな仕事です。
医師た看護師と異なり、ドラマや漫画の題材になることはすくないし、最近では「薬剤師は将来なくなる」とか「薬剤師の説明うざい」なんて言われていますから。
政府と大学が調子に乗って数を増やしすぎたんです。
薬学部定員割れのメリットは?
薬学部が定員割れしてくると、受験生にとってはメリットですよね。
薬学部の場合、卒業後に薬剤師国家試験に合格さえできれば、薬剤師になれます。
東大薬学部だろうが、定員割れしてるFラン大学だろうが同じです。
医師と違い、出身大学や学閥に振り回されることもありません。
Fランク薬学部で良い理由:薬剤師飽和する飽和する詐欺は気にすんな
いまのところ就職率に差はないし、むしろ東大卒や京大卒の薬剤師って、採用側が恐縮してしまいますよ。
定員割れ=合格しやすいので、たまたま志望していた地元の大学の薬学部が定員割れしてるとラッキーかもしれません。
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薬学部定員割れのデメリットは大きい
もし将来、今よりの「薬学部定員割れ」現象が悪化すると、受験が簡単になるのと裏腹に、るデメリットが多くなってきます。
地方部での薬剤師確保が難しくなる
まず、定員割れを起こしている大学の一部では経営の悪化が起きてきます。最悪の場合、学部の閉鎖や定員削減、大学そのものの敬愛破綻という事態が起きてきますよね。
薬学部や医学部、看護学部など持っている大学が地方に存在することは、その地域の医療にとってプラスです。
卒業後に、そのまま地域に残って医療の担い手になってくれる可能性が高いからです。
そのため、薬学部の定員割れによる、大学経営の悪化、経営破綻は薬学部が存在する大学を持たない県、地域が増え、医療従事者の不足がおきてくるでしょう。
薬剤師の確保が一部地域で難しくなります。
薬学部教員や職員の雇用の問題
大学の経営状況が悪いと、大学の職員や教員の雇止め、リストラを行うことになります。実は、大学の教職員は、卒業生の就職先としても重要です。
特に、地方の私立大学薬学部出身で、研究職に就きたいと思った場合、出身大学の教員になるのが唯一の方法といってもいいくらいです。
製薬企業や、公的な研究機関のポストは有名大学や、国公立大学の出身者との競争になってしまうからです。
そのため、大学経営の悪化は、一部の学生にとって就職難につながる深刻な事態なんです。
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薬学部の学生生活への影響
もし入学した大学の薬学部が定員割れをおこしていたら、学生生活にも影響がでてきます。地方部の広いキャンパス、校舎に、少ない人数の学生だと寂しいですし、楽しくないですよね。
友人も少なく、寂しい学生生活です。
大学側は見込んでいた授業料を得ることができません。
職員や教員を必要数雇用できなくなったり、備品を揃えられませんので、十分な教育や、学生のサポートができるか不安です。
在学中に大幅な学費の引き上げがあるかもしれません。
薬剤師の質の低下
薬学部定員割れによって受験難易度が下がると、学生の質が低下します。今現在でも、「選ばなければ」偏差値30台からでも狙える薬学部が存在していますが、これが、この状況がさらに進行すると深刻です。
大学側は薬剤師国家試験に合格させるための授業・教育を重視するようになりますから、最終的には、「薬剤師国家試験対策だけ」に特化したの質が低い薬剤師が増えてくるでしょう。
薬学部定員割れ現象のメリットデメリットを整理した:まとめ
現在起きている、そして将来悪化しうる「薬学部定員割れ現象」について本記事で整理しました。
以下に、本記事でのポイントをまとめておきます。
- 薬学部の定員割れは、2000年以降、新設された私立大学薬学部を中心に起きている
- 特に、国公立大学との学費差が大きく、地域に魅力が無い私立大学が顕著
- 単純に現在の薬学部定員が、薬剤師志望者に対して多すぎるのが原因
- 薬剤師はドラマや漫画の題材になることも少なく、志望者が多くないマイナーな職業なのに定員を増やしすぎた
- 受験生にとっては競争率が下がって入学しやすいのが最大のメリット
- 定員割れによって、今後大学の経営難が起きてくると教職員の雇用や、教育の充実度、薬剤師の質などの点がデメリットとしてでてくる
では。