今回は、研究者の向き、不向きの話をします。
将来研究者になりたい、研究職につきたいと考えて大学、大学院で研究に励んでいる人達。
でもそんな彼ら、彼女らが皆、研究者に向いているわけではありません。
多くの研究者志望者は、その志望理由として、
- 好奇心、探究心が旺盛
- 研究が好き
- 社交性を発揮する仕事よりも、単独で知的作業をする方が得意
- 研究成果を世の中に役立てたい
しかし、実際はこれらをも満たしたからと言って「研究者に向いている」わけではないのです。
逆に、これらの特徴が「研究者不向き」であることも。
本記事では、研究者の向き、不向きについて整理しておきます。
将来研究者、研究職志望の方々の参考になれば幸いです。
研究者の向き、不向きを考える。大事なポイント
研究者としての向き、不向きについて客観的に考える際、よくある「世間の研究者イメージ」にとらわれないことが大切です。
大半の一般人は研究者、研究職とは遠く、かけ離れたところで生活しています。
そんな人たちが抱いているイメージなんかが正しいはずありませんよね。
少なくとも現代の研究者、研究職についている人たちの環境や、仕事のスタイルをよく考えないといけません。
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社交性がないのは研究者向き…は本当か?
私も、長年企業の中で研究職として働いています。
そのなかで、本人は研究者、研究職に向いていると考えているけれど、実際は不向き、ということを実は頻繁に目にします。
典型的な「研究者不向き」パターンとしては、社交性が低く、営業職などには向かないが、研究者であればやっていける、と考えているパターンです。
これは、研究者=実験室にこもって少人数で黙々とやっている印象に引っ張られているのでしょう。
最近は社交的な研究者が多く、社交性が無いと不向きで溶け込めない
しかし、実際は研究者、研究職の現場を見てみると、かなり社交的で、明るく、バリバリの営業職でも十分やっていけそうな人も多いです。
大学生や大学院生に話を聞くと(特に理系、医療系)、研究者になりたい人はたくさんいます。
大昔は、企業と共同研究などでつながっている大学の研究室から、教授のコネ・紹介で学生が斡旋されていました。
なかには、社交性が低く、他の企業や職種で採用してもらえないような学生も混じっていたものです。
しかし今は昔と違い、企業も公的機関も、田数の応募者から面接を含めた選考をしっかりとするようになってきています。
その結果、研究能力が同等なら、(面接を乗り越えた)社交性の高い人材が優先的に採用されるにきまっています。
そんな社交性の高い人達が一定数いる集団で、今時、極端に社交性が低い人はやっていけません。
社交性が低いからといって営業職に不向きなら、研究者としても不向きなんですよ。
チームの中でやっていけないし、職場の雰囲気にすら溶け込めません。
実は研究者に不向き?好奇心や探究心が旺盛なタイプ
自分は好奇心や探求心が旺盛だから研究者向きだろうと思って、研究者になるひとがいます。
しかし、仕事として研究をする場合、自分の好奇心や探求心を満たしてくれるテーマばかりではありません。
と、いうよりも、若いうちは所属機関や上司の研究テーマに携わることになります。
長年、自分がたいして興味のないテーマで下積みすることになるのです。
その間、満たされない好奇心や探求心を抱えて、もどかしい思いをすることになります。
あまりにも好奇心や探求心が旺盛だと、研究者としての日々は辛いものになるかもしれませんね。
研究者向き=研究が好きとは違う
大学や大学院で研究に携わった結果、「研究」に面白さを見出す人は多いです。
研究が好きだから、きっと自分は研究者向きだ!と感じるかもしれません。
でも、「研究が好き」と「研究者向き」とは違います。
研究者、研究職では高い専門性や、高いレベルの知能、語学力がないと戦っていけません。
好きか、嫌いかだけで、~向き、~不向きなんてのはわかりませんよね。
それに、「好きなことは仕事にするな」という人もいます。
もし、好きなことを仕事にして躓いてしまうと、心の逃げ場がなくなってしまうからです。
研究者に最も不向きな「自分の研究成果を世の中の役に立てたい」と宣言するタイプ
なぜ研究者になりたいのか?と聞かれて、「自分の研究成果を世の中の役に立てたい」と答える人がいます。
このタイプは、もしかしたら最も研究者・研究職に不向きかもしれません。
特に「基礎研究」の分野においては。
当然、研究者として脚光を浴びる人、例えばノーベル賞を受賞する人は、その研究成果で社会、世の中の役に立っている人たちです。
でも、ノーベル賞の授賞者たちの研究内容をよーーく見てみてください。
例えば、オワンクラゲの体内に存在する「緑色蛍光タンパク質」の研究をした下村脩先生。
最近では、iPS細胞を発見した山中伸弥。
彼らの研究は、「それだけで」世の中の役にたつものではありません。
あえて言うなら、「他人の研究に役立つ」、非常に基礎的な研究成果をあげた研究者なのです。
彼らのような基礎的で、他社の研究の基礎となる、研究を地道にやっている研究者は、世界中に無数にいます。
多くの研究者は、そんな日の当たらない場所でも、コツコツと研究をしているのです。
大半は、大々的に評価されることもありません。
なんなら、本人の死後に、本人の思いもよらない形で応用されることもあります。
そのため「自分の研究成果を世の中の役に立てたい」ことを主目的としている人は、純粋な意味では研究者には不向きです。
どうしても、「自分の研究を世の中の役に立てたい」なら、生産技術者や、後期の応用研究に従事するべきです。
ただし、これらの分野の研究者のスタイルは、生産者、ブルーカラー労働者に近く、世間の研究者イメージとは相当異なります。
研究者向き、向いている人のタイプは?
ではどういうタイプが研究者、研究職向きなのでしょう。
上述したように、いわゆる世間で「研究者向き」というタイプが必ずしも、実際に向いているわけではありません。
ではどういうタイプが研究者、研究職向きなのでしょう。
下に挙げるのような性質をもった人は、研究者向き、向いている人としてのポテンシャルがあります。
使命感と責任感が強い人は研究者向き
まずは、使命感と責任感がある人です。でも使命感といっても「世の中の役に立てたい」とか大きなことではありません。
目の前のことを、困難なことがあっても責任もってやり遂げる、そんな人です。
その時、これが世の中の役に立つかどうか、なんてものは深く考えません。
強い野心は持たず、誠実な人は研究者向き
自分の研究結果をもって成功したい!業績を上げたいという意志がつよすぎると、研究者には不向きです。
なぜなら、研究者は時として、誤ったデータや結論を出してしまいます。
たとえ自分の思った通りのデータがでたとしても、実験主義の誤りや、共同研究者の意図的なごまかしがあることを考えて、多角的に結果を検証しないといけません。
そうでないと、過去のSTAP細胞問題のようになってしまいます。
そのため、常に、自分のデータを疑い、野心は持たず、コツコツと誠実な検証を積み重ねられるタイプは研究者向きといえます。
研究内容に過剰なこだわりや興味を持たないひとは研究者向き
例え興味があろうと、無かろうと、淡々と、目の前の研究課題に取り組み、乗り越えていけるひとは研究者向きです。研究テーマの好き嫌いや、興味の有無で判断すると、どうしても結論や実験計画に偏りがでてしまいます。
しかし、一つの事象について取り組むには、時には興味の無い課題や、好きではないサブテーマに長年取り組む必要もでてきます。
派手で、最先端の、面白い研究ばかりで成果を出し続けることができるのは、ごくごく恵まれた幸運な人だけです。
そのため自分が従事する、研究内容に強すぎる愛着やこだわりを持たない人の方が柔軟な研究者生活を送れます。
研究の展開によって、モチベーションが上がったり、下がったりということもありませんし、冷静に優先順位をつけて物事を考えていくことができます。
逆に過剰な、「研究愛」や「研究者への憧れ」を持っているひとは、研究者には不向きということになります。
社交性な人はもちろん研究者向きだし、なんにでも向いているよ
あとは、職場やチームの同僚と日々を楽しめる社交性ですね。社交性があるひとは研究者向きだし、もちろん他の仕事もできます。
近年では、それなりの研究テーマだと、他の研究機関や企業との共同研究をするのが普通です。
社交性の無い人は、いまどきの研究者には超不向きだと思います。
研究者の向き不向きとは?向いてる人、向いてない人を解説:まとめ
以下、まとめです。
将来研究者、研究職志望の方々の参考になれば幸いです。
- 今時の研究者は社交性があるので、社交性がない人には不向き、溶け込めない。
- 強すぎる好奇心や探究心を持ったひとは研究者不向き。仕事としての研究職で満たすのは難しいから。
- 研究が好き=研究者向きは大間違い
- 「自分の研究成果を世の中の役に立てたい」人は、研究なんかやるもんじゃない。他者の研究の役に立つ、地道な研究が、研究の本来の姿
- 使命感と責任感があれば研究者向き
- 野心を持たず、誠実な性格だと研究者向き
- 研究内容に過剰な興味やこだわりがあると良くない
- 社交性の無い人は、現代においては研究者不向き
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