日本社会において、医者は給料の高い職業のトップレベルに君臨しています。
中央社会保険医療協議会の調査(医療経済実態調査 )によると、勤務医(病院に雇用された雇われ医師)だと、だいたいの平均年収は1200万円となっていて、ここ10年間は安定して、高額です。
もちろん地域や経験によっても異なるでしょうが、まー日本のどこであれ、どんな規模の病院であれ、普通に勤務医をやっていたら余裕で1000万円の年収は確実に超えてくるということです。
サラリーマンの平均年収が500万円くらいですから、かなり高額ですよね。
ごく一部の大企業だと社員の平均年収が1000万円という企業もありますが。
いい大学出て、一生懸命就職活動して、仕事で成果をあげて、出世して、運も味方して…それでようやく到達できるレベルが年収1000万円です。
さて、一方、巷では日本経済の縮小、なかなか上昇しない会社員の給与、高齢化にともなう税負担増、といった経済的にはあまり明るい未来は待っていません。
では、果たして医者の高額な年収は今後も維持されるのでしょうか。
これを予想するには、いくつかのポイントを理解しなければなりません。
本記事では、今現在あるいは今後、医者目指す人のために、医者の年収の今後について記載しています。
今後医者の年収は維持されるのか、下がってしまうのか?そのあたりを考えるためのポイントについて整理しています。
医者の年収に影響を与える要因を考えよう
まず、医者の年収が何によって変わるのか、どんな要因が影響を与えるのかを整理しておきましょう。
今後、それらの要因がどう変わっていくかによって、医者の年収も変わっていくからです。
医者の年収に影響を与える要因1:日本全体の医療費
医者の年収、給与の元になるお金は、医療行為に対する報酬です。
すなわち医療費ですね。
日本で年間に支払われる医療費が大きければ、医者をはじめとした医療従事者や製薬、医療機器関連企業を含めた全体の売り上げ、市場が大きくなるということです。
この点は医者に限らず、どの業界にもいえることですね、市場規模が大きければ、それだけ利益もでますし、報酬の原資が確保できます。
反対に、医療費全体が縮小していけば、売り上げ、市場規模が小さくなるということですから、関連する労働者、医療従事者が手にする報酬も少なくならざるをえません。
高齢化社会に伴う医療費の増大は、重大な社会問題ですが、今後の医者の年収においてはプラスに向かう要因なのです。
医者の年収に影響を与える要因2:医者の総数
次に、日本で医者として働く人数が今後どうなっていくか、という点。実は日本の人口当たりの医師の数は年々増えています。
1996年に人口10万人あたり191.4人だった医師は、2016年には257.1人になりました。
しかしそれでも、現在都心部除き、医者の数・人手は不足しているといわれています。
特に地方の過疎化地域では、患者数に対する医者の数は供給不足の状態が何年も続いています。
歯科医師や薬剤師は、供給過剰なんて言われることもありますが、医師は地域によってはまだまだ足りないのです。
そのため、地方部では医師の確保をするために高額報酬を提示することがあります。
都心と比べて地方の医者のほうが年収が高いのです。
今後この状態がさらに悪化していくことになれば、医師の平均的な年収は上昇していくでしょう。
また、単純に患者数に対して医師の数が増えれば、医者一人当たりの顧客(=患者)が減って売り上げが落ちますし、逆であれば売り上げが下がります。
医者の年収が今後どうなるかを考える際には、医者の数が今後どう推移しいくかがポイントになります。
医者の年収に影響を与える要因3:患者の総数
患者の数も医者の年収を決定づけます。一人の医者に対して、何人の患者が来るかで、病院の売り上げと医者の年収がきまってきます。
国民がみな健康で、病院に行く患者が激減すれば、医者は商売あがったりなんですね。
医者の年収に影響を与える要因4:医者の役割、責務
現在、医者という職業が非常に高年収となっている理由は、人命を左右する仕事であるという「重い責任」と「きわめて高い専門性」です。今後の医療制度がどういった方向に向かっていくかわかりませんが、もし医師が今以上の役割や責務を負うことになれば、もっと医師の報酬を高くするべきだという議論になるかもしれません。
反対に、現在医者のみに許されている行為や、責務を他の医療従事者(薬剤師や看護師)が担うことになれば、医者の報酬を引き下げる要因になってもおかしくないですよね。
医者の年収は今後どうなるの?
では上記の医者の年収に影響を与える要因を踏まえて、今後、医者の年収はどうなるのか。どんなシナリオがあるかをか考えていきましょう。
今後、医者の年収が上昇するシナリオ
医療費をはじめとした社会保障費は年々増え続けています。理由は医療の高度化と、高齢化による国民一人当たりの医療費の増加ですね。
これは今後数十年にわたって増加し続ける見通しです。
政府は後発医薬品の使用促進や、診療報酬制度を変えたりして今後の医療費の増大を緩やかにしようとしているものの、歯止めはかかりません。
すなわち医療分野あ「市場」としては成長分野なのです。
また、医療が高度化すれば、それだけ医者としての専門性もより高いものが必要になってきますよね。
そのため、医者の報酬をもっと上げるべきがという議論が(医師会を中心に)始まる可能性もあるのです。
こういった方向のシナリオに向かった場合、医者の年収は今後さらに上昇していくことでしょう。
医者の年収が上がると何がおきる?
医者の年収が今後も上がっていくと、どうなるのでしょうか。まず、医者になりたいと思う人が増えて、医学部受験の難易度は確実に上がっていきます。
背景には、医者以外の職業は、一部を除い今後確実に「稼げなく」なるからです。
高齢化によって日本経済は今後確実に縮小していきますし、多くの企業は国際競争力を失うでしょう。
今では割と高い年収を得られるとされいる自動車産業や、製薬産業も、国際競争力を失って、海外の企業に市場を奪われてしまいます。
そのため、医者の年収が今後上がれば、他の職業の年収との相対的な差は開いていくのです。
医者くらいしか食っていけない=医者という職業の人気が上昇する、とうことが確実に起きるでしょう。
優秀な学生が医学部に殺到します。
医学部やめとけと言う暴言。医者位しか食えない時代が来そうなんだが?
そして同時に、薬剤師や看護師といった、そこそこ年収の良い医療従事者の給与は下がっていきます。
この理由は、医師会と薬剤師会や看護師会の力の差が原因です。
仮に医者の報酬、年収が上がってしまった場合、医療費の抑制を何とかしようとします。
しかし、医師会というのは歴史的にも政府の影響力が最も強く、発言力もあるのです。
一方で、薬剤師会や看護師会は素直に政府に従ってしまいます。
そのため、例えば調剤報酬改定によって薬剤師の報酬を減らす方向にもっていき、医者の年収増加分を、薬剤師の年収削減分で補填する、なんてことが今後起きてくる可能性がありますね。
今後、医者の年収が下がっていく可能性はあるのか?
反対に、今後医者の年収が下がっていくシナリオもあります。今のところ、医者については供給過剰で人余りということにはなっていません。
一部の地域では、村に医者が一人しかいない、なんてこともたびたび報道されています。
しかし今後もこれが続くとは限りません。
この30年間ほどの医師の数の推移をみると、右肩上がりに増えていっているのです。
1982年には医者の総数は17万人ほどでしたが、2016年には倍近い32万人になっています。
高齢化により、患者数はまだまだ増えていく見通しですが、それはどこかで必ずストップします。
少子化により、人口そのものは減少しているからです。
今後、医学部の定員が現在のままで、医師国家試験の合格者が一定の状態が進めば、いつかは飽和することでしょう。
そうなると、医師不足が解消され、一部の地域での高額年収の医師求人も減っていくとおもいます。
都心部では医師が余り、患者の取り合いや小さなクリニックでは倒産するところも出てきてしまうでしょう。
一応、今後の医師余りを避けるために、医学部の定員を2022年あたりから減らしていこうという議論も進んでいるようですが。
また、別のシナリオとして、医師会の反対を押し切って政府が医者の診療報酬を下げる方向に舵を切ることが考えられます。
いくら医師会が強いといっても、世の中の人の年収がどんどん下がっていて、医者だけが政府の後ろ盾で高い年収を今後も維持するのは難しいでしょう。
さらに、制度の変更によって医者の責務も変わる可能性があります。
例えば一部の重篤でない疾患の診察、処方については、健康保険での負担をやめようという議論があります。
ドラッグストアで薬を買って自分でケアしてね、ということです。
患者も「10割負」となるなら、ドラッグストアで買ったほうが安いので病院にいきません。
こうなると、医者の仕事は減って、病院の利益減少、今後年収が下がっていくことになりますね。
花粉症患者の多いクリニックの、耳鼻科医とかやばいかもしれません。
医者の年収が下がると何がおきる?
医者の年収が下がると今後何がおきるでしょう。年収、報酬に関しては、医師が最も高年収、歯科医師がそれに続き、そして薬剤師と看護師、そして理学療法士や看護師といったピラミッドは必ず維持されます。
そのため、トップに君臨する医者の年収が下がれば、ピラミッドの下もさがります。
結果、医療従事者の年収が全体的に引き下げらえることは間違いありません。
また、医者の年収が一定の水準を下回ると、医学部の人気が下がり、一部の高額な学費を徴収する私立の医学部、医科大は縮小や廃止される可能性があります。
高額な学費と、医者の年収が釣り合わない・コスパが悪いとなると学生があつまりません。
学費の安い、国公立系の医学部は大丈夫ですが、受験の競争は激化していくでしょう。
この現象についてはく薬学部・薬剤師においても事情は同じで、医師・医学部に先行して、私立大の薬学部、薬科大の縮小・廃止が起きてくると思います。
薬学部は不人気になっていくのだろうか...orz
医者の年収の今後は気になるものの…
以上、今後の医者の年収に影響を与える要因をまとめました。
これらの要因に政府や、医師会を中心としてどういう議論がすすんで行くか?によって医者の年収は変わっていくでしょう。
個人的な予想としては、医者の年収は今後下がると思います。
やっぱり政府としては、なんとか医療費の削減をしたい、そうしないと社会保障制度が破綻すると考えているからです。
えー、じゃあ医者になるのやめよっかなー、なんて考える人もいるかもしれませんね。
でも、医者以外の仕事についても一部を除いて確実に縮小、年収が下がっていきます。
そのあたりをどう考えるかですね。
これからの若い人は大変だ。
では。
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