最近では製薬メーカーは、業務効率化の一環として臨床開発業務の一部または大部分をCRO(医薬品開発業務受託機関)に委託しています。
近年、製薬メーカーが主導する臨床試験(治験)の現場では
実際はCROに所属するCRA(Clinical Research Associate/臨床開発モニター)が実務の一部を担っているのです。
CRAは医薬品の開発に関われる職種として人気があるのですが、CRAとしての業務は激務、仕事がきついです。
CRAになったものの、その激務に耐えかねて、辞めたいと考える人も大勢います。
実際、CROのCRAは人材の流動性が高いです。
本記事ではCRAが激務、仕事がきつい実態について整理しています。
一方で、CRAを辞めたいと考えている人が、確認すべきCRO所属のCRAとしての「良い面」についても書いています。
CRAとして何年か勤務して、仕事きついけど良かった、という人も実際いるのです。
CROはなぜ激務なのか
CROのビジネスモデルとして、製薬企業と治験ごとに契約を結び、一定量の仕事を請け負います。
そのため、CROがビジネスを拡大、売上と利益を確保するにはたくさんの治験を受注し、報酬をもらう必要があります。
限られた人数で「たくさん業務をこなす=利益増大」となるのです。
結果的に、所属する社員が各人の限界まで働くことを求められます。
一方製薬メーカーは業務量ではなく、「たくさん売れるいい製品をつくる」ことが利益を増大させることにつながります。
同じ治験に関わる業務を行っていながら、CROと製薬メーカーは全く異なるビジネスモデルになっています。
CRAは仕事がきつい?どれだけきついの?
治験、臨床試験を受注するCROの社員の大半はCRAです。
発生する業務のほとんどはCRAが担うため、CROが激務=CRAが激務、仕事がきついということになります。
CROのCRAは出張、業務量が多く、給料が安い
10年ほど前、CROで働いている女性CRAとの付き合いがありましたが、毎月の残業は40時間以上で、毎週のように出張していました。
他県にある担当する治験実施機関に出張後、夜遅くにオフィスに戻って報告書等の書類仕事をする日々です。
報告書は依頼者である製薬メーカーに提出するものもあるため、かなりのクオリティを求められますので、かなり細かい点まで気を配れる人でなければなりません。
彼女が所属していた会社では、みなし労働、残業代なし(基本給に40時間分の残業代込みとのこと)だったようです。
製薬メーカーと比較すると、CROで働くCRAは、体力的にも、収入的にも、きつい仕事ですね。
新卒でCRAとして入社して1年もしないうちに、辞めたいと考える人が多いそうです。
CROのCRAはたくさん知識が必要
世の中にはたくさんの病気とそのメカニズムがあります。治療薬のターゲットとなる仕組みも無数になります。
製薬メーカーのCRAならある程度、各担当者や所属するチームの専門領域がきまっており限られた範囲の知識を有するだけで対応できます。
一方、CROのCRAは、少ない人数で複数の治験、複数の疾患領域をカバーすることが多いため、一人の担当者が知っておくべき専門領域の幅が広くなります。
当然、日々勉強したくさんの知識を必要とします。
急に未経験の分野の治験業務の依頼を受注して、あわてて知識を詰め込む、なんてこともあります。
勉強が苦手だった人にはかなりきつい仕事です。
CROのCRAの仕事は精神的にもきつい、消耗する
立場上、製薬メーカーのCRAは治験実施機関の「医師」に気を使いますが、CROのCRAは「(依頼者である)メーカーのCRA」と「医師」の両方に気をつかうことになり、その点も仕事がきついと感じる要因でしょう。CROのCRAは常に製薬メーカーと治験実施機関の間に入って、消耗していきます。
CROのCRAは仕事がきついのにモチベーションが上がらない
きつい仕事に立ち向かうには、モチベーションが必要です。しかしCROのCRAは激務にも関わらず、なかなかモチベーションを維持することが難しいようです。
前述のように、CROはあくまで依頼を受けて、製薬メーカーの治験業務の一部を担っているにすぎません。
仮に治験が成功、新薬が上市されたとしても、CROにとって直接的な利益にはつながらないのです。
自分が手掛けた新薬にも関わらず、主役は製薬メーカー。
CROのCRAにはスポットライトが当たりません。
これでは、激務を乗り切るモチベーションを維持するのも大変です。
CROのCRAになるのは辞めた方がいいの?
CROは激務だ、CRAは仕事きついと書くと、新卒でCROへの就職を検討している学生は躊躇してしまいますよね。
特に薬学部の学生であれば、わざわざ仕事がきついCRAを選ぶよりも、調剤薬局の薬剤師になる道もあります。
激務のCRO業界でCRAをやっていけるのか
はっきり言ってしまうと激務のCRO業界でCRAをやっていくには、体力、精神面での強さは必ず必要です。その点に自信がないのであれば、辞めた方がいいです。
医薬品の開発に関わりたいという強い意志だけで乗り切れるものではありません。
甘くない世界です。
製薬メーカーのCRAのほうが断然良い
同じCRAでも、製薬メーカーのCRAになれるものならそちらの方が断然いいです。労働環境の面でも、報酬の面でも。
以下の記事でも書いていますが、大手のCROに入ったとしても製薬メーカーの年収には及びません。
薬学部の就職先でCROって負け組なの?考えてみた
ただし、製薬メーカーで採用されるのは一部の優秀または幸運な学生のみです。
狭き門になっています。
CROのCRAとしてやっていける人は?
CROのCRAのネガティブな面を書いていますが、良い面もあります。
人によっては、仕事きついけどCROのCRAになって良かったという人もいます。
薬剤師や、製薬メーカーのCRAには出来ない経験ができます。
たくさんの治験に関わりたい人
CROのCRAは、一人の担当者が多くの業務を担うため、結果的にたくさんの治験、臨床試験に関わることになります。
これはデメリットでもありますが、「できるだけ多くの医薬品開発に関わりたい」と考える人にとっては、CROでCRAの仕事につく大きなメリットです。
勉強を続けていくことが好きな人
CROのCRAは常に勉強が必要です。
一人で複数の疾患領域を勉強したり、短時間で製薬メーカー担当者と同等の知識をつける必要があります。
学生時代から勉強が好き、得意、あるいは大学で学んだ知識をフル活用していきたい人にとっては、非常に魅力的な環境です。
旅行好きは出張が多いのがうれしい
CROのCRAは一人で複数の治験実施機関を担当します。
入社3~4年もすると、複数の県で4~5つの施設を担当することもあるようです。
旅行が好きな人にとっては、空いた時間や宿泊出張の際に観光地に足を運んだり、現地のおいしいものを食べたりする楽しみもありますよね。
CRA辞めたい?CRAを続ける(た)メリットはあるよ
今現在、CROでCRAをしている人のなかには、もうCRA辞めたいと迷っている人もいると思います。
仕事きついのに、給料安い、激務でプライベートの時間が持てない、勉強もしないといけないのにモチベーションが上がらない。
そうですよね。
でも、辞めてしまうまえに、後悔が残らないよう、CROでCRAを続けた、あるいは続けるメリットを整理してみました。
製薬メーカーのCRAに転職できる
勤続年数によりますが、数年間CROでCRAを経て、製薬メーカーのCRAに転職するパターンがよくあります。あと数年現状に耐えながら経験値を積むことで、製薬メーカーへの道が開けるかもしれません。
また、現在、すでに一定以上のCRA経験があるのであれば、一度転職のアクションを起こしてみるべきです。
医療現場でも役に立つ
CROでCRAとして働いている人には薬剤師や看護師資格の保有者も多いです。もしも医療現場に転職するとしても、CRAとして数年間勤務した経験は、必ず役立ちますし、転職先で重宝されます。
もし、CRA辞めたいと考えている人も、体力的、精神的に可能であれば、できれば数年間のCRAとしてやり遂げることで、今後のキャリアに役立つはずです。
では。
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