看護師から医者になる方法と4つの壁


看護師は医者や薬剤師と並んで、医療の現場を支えているとても重要なお仕事です。

実際、医療従事者の絶対数で言えば、看護師数は医者や薬剤師数よりもはるかに多く、欠かせない存在となっています。

誰しも看護師さんにお世話になったことがあるでしょう。

看護師は医者と同様、またはそれ以上に患者の対応や夜勤をこなすとても忙しい、激務の仕事です。

また、立場上、患者や医者からのハラスメント被害を受けるケースもあり、社会問題化しつつありますよね。

それにも関わらず、看護師の報酬は医者の報酬よりもはるかに低いのです。

(医者は賢く、難関な大学、医師国家試験に合格しているので、報酬が高くて当然だといってしまえばそれまでですが。)

そういう背景もあって、「看護師から医者になる」という希望を抱く看護師もいます。

本記事では、看護師から医者になること方法はあるのか、そして、そのために超えるべき4つの壁について整理してまとめています。



「看護師から医者になる」希望の背景


現在の日本の医療現場において、看護師の待遇はあまりよろしくありません。

看護師の仕事は3K=きつい、汚い、危険と揶揄されることもあるのは有名ですね。

それにも関わらず給料が安い、というのは多くの看護師が抱えている不満でもあります。

加えて、医療現場において、看護師をはじめとした医療従事者は、患者からのセクハラやパワハラ行為に悩まされる場合があるといわれています。

厚生労働省は2019年4月に、患者による看護職員ら医療従事者への暴言や暴力などの防止に向けた対応マニュアルの作成指針を公表する方針を明らかにしています。

これらの不満から、看護師のなかには医者になることを望む人が出てくるのです。

また、医療現場でのあり方に疑問を持ったり、医者のように治療方針を自分で決める役割を担いたいと考えて、看護師から医者になることを希望するケースもあります。

そもそも「医者」と「看護師」になる方法は


では、看護師から医者になる方法はあるのでしょうか。

まず、そもそも「医者」及び「看護師」になる方法を整理しましょう。

医者になるためには、医師国家試験に合格し医師免許を取得、その後、最低2年間の研修医期間を経て一人前の医者になることができます。

医師国家試験は誰でも受験できるものではなく、大学の医学部医学科にて6年間の単位を取得して卒業する必要があります。

医学部+医師国家試験+研修医期間を満たして、医者になれるわけです。

一方、看護師は看護師国家試験に合格して、看護師免許を取得します。

看護師国家試験は、看護専門学校(3年)または4年制大学の看護学部や看護学科を卒業した場合に、受験資格を得ることができます。

医者と看護師は、国家試験の受験資格を得る時点で、異なる学校(大学)教育が必要なのです。

看護師から医者になる方法


医者と看護師は異なる国家試験、異なる学校教育が必要になるため、看護師から医者になる方法としては、「大学の医学部に6年間通う」ということが必須になります。

一部の大学の医学部では、大卒者を対象に編入試験を設けていることがあります。

合格すれば、医学部の2年次や3年次からスタートできますが、募集枠はとても少なく、非常に難易度が高いものです。

看護師は、医者と同じ医療従事者で、同じような知識をもっていますが、高校卒業見込みの受験生と同じところからスタートです。

裏技はありません。


看護師から医者になるための4つの壁


看護師から医者になる方法としては、大学の医学部に入学することが初めの一歩です。
しかし、看護師が医者になることを望めば、誰しもうまくいくわけではありません。


看護師が医者になるには、越えなければならない4つの壁があるのです。


学力の壁

一つ目の壁は、学力の壁です。

大学の医学部の難易度が非常に高いことは有名です(全学部で一番難しい)。

国公立も私立もどちらにも当てはまります。

2016年のデータによると、最難関の東京大学医学部の偏差値は77です。

私立の医学部で最も難易度が低いところ(例:川崎医科大学)でも60以上の偏差値が必要です。

一方、看護学部を設置している大学を見てみると、最低難易度クラスでは偏差値は30台からあります。

京都大学や大阪大学の医学部ー看護学専攻で、偏差値は60台半ばです。

こうしてみると、京都大学出身の看護師が、川崎医科大学を目指すならなんとかなりそうです。

でも、そうでない場合、看護師から医者になるためには、圧倒的な「学力の壁」を超える必要があるのです。



学費、お金の壁

医学部に仮に合格したとしても、その「学費、お金の壁」が立ちはだかっています。

私立の医学部の場合、6年間の学費は2000~4000万円ほど必要です。

国立の場合でも、400万円ほどです。

しかも、看護師を辞めて、医者を目指すとなると、仕事を辞めないといけません。

働きながら、アルバイトを長時間やりながら単位を取得できるほど医学部は甘くありません。

看護師をしていると、それなりに生活ができる給与が毎月手に入りますが、6年間は収入がほとんどなくなるのです。

そして、研修医時代の2年間は、低収入、長時間労働となります。

学費をどうするか。

学部時代の6年間と研修医時代の2年間の生活をどうするか。

というお金の問題をなんとか解決する必要があります。

年齢の壁

一人前の医者になるには、6年間の学生生活と、最低で2年間の研修医期間を経る必要があります。

計8年間かかるわけです。

卒業したての高校生であれば、ストレートで26歳で一人前の医者になれますが、仮に30歳の看護師だと、38歳でようやく一人前の医者になることになります。

医者は体力が必要な仕事です。

看護師から一人前の医者になるときの年齢、体力はのこっているのかという点を気にすることになります。

また、ある程度の年齢で、結婚や出産のライフプランとも向き合わなければなりません。

これが、看護師から医者になるときの「年齢の壁」です。





医者社会の壁

最後の壁は「医者社会の壁」です。

医者ってとてもプライドが高い人がいます。

「看護師から医者になる」という考えに、あまりいい印象を持たない医者もたくさんいます。

晴れて医者になった時に、「元看護師」であることがよく思われないこともあります。

難しい医者社会でうまくやっていけるか、という問題に直面します。


看護師から医者になることはいいことだと思う


看護師から医者になる方法とその問題点について、結構ネガティブに書いてしまいました。

かなり難しい道であることは確かだからです。

でも、個人的には、看護師経験者が医者になれば、医療現場でとても貴重な経験、経歴の持ち主として歓迎されるべきだと思います。

看護師との連携もうまくいきそうですし、医療現場で知識を得た時点で、医学部での勉強、研修を積めば高いスキルをもった医者になれそうです。

看護師から医者になる人がもっと、増えてもいいんじゃないかと思っています。
がんばってほしいですね。

では。


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